さて。
 ダイソー国産、と来たら、ラミーをやらないわけには行きません。
 なんの話かっつーと、初心者向け廉価万年筆の話です。

 とは言っても、サファリはカジュアルでポップでシャレオツで万年筆の古臭いイメージを覆しますよー。
 アルスターはアルミ軸でサファリの兄貴分ですよー。
 …程度のググれば5分で得られる誰でも言ってるようなうっすーい情報しか出せません。
 ここはひとつ、一般情報以外の個人的な雑感と、万年筆以外で所持しているラミー製品を出して記事の水増ししてお茶を濁しましょうか。

サファリ/アルスター
Safari & Al-Star


 ま、ラミーっつったら基本はサファリだと思います。
 ただ万年筆に興味を持ち出してからサファリに出会うと、「サファリ」と言う商品は万年筆のことだと錯覚してしまうのですが、そうではなく、ラミーにおいてサファリはシャーペンやボールペンも含めたデザインシリーズ名です。
 シリーズはサファリ以外にもアルスターや2000などがあって、つまりシリーズ展開するのはラミーの基幹商品だって事ですね。
 んで自分は万年筆しか持ってないから万年筆を出します。
 サファリ/アルスターがどんなペンなのかってのは、そんなもんググればいくらでも出てくるので、ここで二番煎じやっても誰も喜びませんよね。
 なのでここでは独断と偏見で書き殴ります。

・自分の一番お気に入りなのはやっぱりアルスターですね。
 だってこの色の名前がもうDeep Purpleですよ。
 経歴がジョンロードから始まったロックマニアの私が買わないわけないです。見た瞬間ポチりました。
 ブラックサバスとか、レッドツェッペリンとか、ブルーオイスターカルトとか出たら買うのになぁ。
 イエローサブマリンだったら買わないけど。

・サファリも良いペンなんですよ。
 でもサファリは学生向けで、カジュアルにガシガシ使える傷がついてもへっちゃらな廉価ペンって位置付けなんだけど、3000円のペンってそんなラフに使えますか?
 私が貧乏だからいけないんですか?
 そういう位置でラフに使うにはせいぜい数百円までで、1000円のカクノでギリギリじゃないかと。
 だからこそプレピーの安さが脅威なのです。
 そこでアルスター。
 アルミの金属軸で高級感がアップして学生向けなラフさを払拭しているのに、サファリよりちょっと高いだけという。
 なので万年筆を大切に扱いたいならアルスターがオススメです。
 サファリを大事に大事にケースに入れたりして大切に扱っていると滑稽でしかないけど、アルスターならそういう運用も様になるのです。

・ニブは確かに太いです。
 国産のFがラミーのEFに、国産のMがラミーのFに相当するくらいに、規準が一個ズレる感じ。
 欧米のアルファベットを書くのに向いてるニブと、日本語の細かい漢字を書くのに向いてるニブとの違いですね。
 ・・・ってのは、大抵のレビューに書いてある事ですね。
 しかし、所詮は廉価モデルなので、そこまで国産万年筆のような精密さできっちりズレたりしてはいません。
 実際は「個体差」という便利な単語によってEFとFの違いはまちまちです。
 EF並みに細いFもあれば、F並みに太いEFもあります。そして国産EF並みに細いEFもあるでしょう。
 だからこそ、万年筆は実際に試筆してみて書き味を確認してから買わないといけないのです。
 ネットで買う場合は、思ったより太くても文句は言わない、どんなのが来ても泣いたりしないという覚悟がある場合に限ります。
 私も高級品以外はほとんどネットで買ってますが、ダイソー万年筆で鍛えたニブ調整スキルが結構役に立ってます。
 どうしても自分で対処できないのなら、ペンクリニックに駆け込むしかありません。

・万年筆初心者で初めてサファリを買う時は、EFとFでどちらにするかめっちゃ迷うと思います。
 指南サイトでは「初めてのサファリはEFを買え」と断言している所もありますね。
 うん。私もそう思います。
 毎日持ち歩いて常用して他のペンなんか一切使わずにサファリだけで日本語を書くってことを前提に選ぶのなら、比較的細かい文字を書きやすいEFを選ぶしかないと思います。
 ・・・そんな縛りプレイして楽しいですか?
 私が勧めるとすれば、どっちかを選ぶのではなく、両方買えと。
 万年筆ってのはニブが太い方が書き心地が良くて楽しいのです。
 サファリも例外ではなく、Fに比べるとEFはどうしても引っかかる感じが出てしまいます。紙やインクにもよりますが。
 ならば、細かい日本語をラミーのEFで無理矢理せせこましくストレス溜めながら書くよりも、細かい文字を書く時だけ国産EFを使って、細かくなくて良い時はラミーのFやMでのびのび書く方がずっと楽しいんじゃないでしょうか。
 なので、私のペンケースには大好きなアルスターのFと、日本語用にプレジールを2本刺しで常備しています。
 まあ普段使いはポケットに刺してるキャップレスデシモなんですけどね。
 ただデシモの方は色彩雫のトンチキな色が入ってる事が多い(今現在は紺碧)ので、アルスターとプレジールには実用で使えるブルーブラックを入れています。

・スケルトンもつい買ってしまいました。
 万年筆の世界では、スケルトンじゃなくてデモンストレーターって言うのが通っぽいですけど。
 夏になってスケルトンの万年筆が欲しい病を患ってしまいました。
 やっぱ暑いと涼しげな見た目の万年筆がそれはもう魅力的に映ります。
 カクノも8月から透明軸を販売開始するなんて商売が上手い。ええ。まんまと買っちゃいましたよ。使い途ないのに。
 でもスケルトン万年筆と言えば王道はサファリなわけで、欲しいなーとAmazonを見てたら、なんとFニブだけど1800円で売ってるじゃないのさ。
 サファリは大陸製の偽物が多く出回っているので、これもそうなんじゃないの?と疑ってかかったのだけど、販売元はAmazon直販で怪しいマーケットプレイスではないし、ついポチってしまいました。
 届いた商品は、偽物を見分けるポイントを全部クリアして、日本の正規代理店であるDKSHジャパンの保証付説明書の入った本物でしたよ。
 流石Amazon直販。やっぱ安全に買うならマケプレは避けた方が良いですね。
 ちなみに、サファリはドイツ本国のAmazonでは15ユーロ前後なので、それよりも格段に安い場合は注意しましょう。
 そしてコンバーターは4ユーロ前後で絶対に別売りです。
 もし付属してきたら、それコスト計算してみて下さい。本物がそんな値段で買えるわけないです。
 あ、コンバーターと言えば、スケルトンに純正コンバーターを入れると赤いノブが目立つのが嫌だから、ステュディオ用の黒いコンバーターを入れるって人も居ますよね。
 私としてはこの赤いのが良いんじゃないかと思うのですが。
 ボールペン等の他のペンでは筆圧という自分の力だけでインクなりカーボンなりを紙に定着させて筆記するのですが、万年筆は毛細管現象という外的パワーを利用して筆記するので、自分以上の力で書くというとてもパワフルな筆記具なわけです。
 それをイメージしたかのように、透明軸の中で赤い心臓部が見えるっていうのは、かなりカッコイイと思うんですけど。
 中二病っぽいですかね。


ink-x
ink-x

 不思議なことに、これ商品名が全部小文字なんですね。
 そもそもこれは何なのかというと、万年筆のインクを消せるペンです。
 消せるペンというと今はフリクションを思い浮かべますが、そのご先祖様って感じですかね。
 ・・・どうしよっか。
 このインクXについて説明するには、万年筆やインクの歴史から全部説明しないと理解出来ないんだよなぁ。
 とりあえずかいつまんで書くので、わからなかったらググって自分で調べるか、華麗にスルーして下さい。

 これは機能としては、青インクを消せる薬品の出るペン先と、その薬品で消した所にはもう二度と万年筆インクで書けないので、そこに書ける青インクと同じ色のサインペンが一緒になったツインペンです。
 ヨーロッパの学生は鉛筆ではなく万年筆を使うってのは以前に書きましたかね?書いてませんかね?まあそういうことです。
 するとやっぱり間違えたら消したいわけで、その消すための消しゴム替りがコレなんです。
 このink-xはラミーの製品ですが、ペリカン等からも同様の製品が出ていて、向こうではメジャーなものらしいです。
 そしてここが重要なのですが、インクXでは青インクしか消せません。
 黒や赤に対応する別のインクXが存在するのではなく、消せるインクが青だけなのです。
 この点から、万年筆インクの基本色は青なのです。黒やブルーブラックではないんですね。
 ラミーの万年筆に付いてくるサービスカートリッジは全部青です。ペリカンインクの基本色もロイヤルブルーです。
 この消せる色としての青と対極なのが、皆さんご存知の消えない(耐水耐光性のある)ブルーブラックな訳です。
 勘違いしてる人も多いのだけど、ブルーブラックって色は青と黒の中間色なのではありません。私も調べるまで知りませんでしたけど。
 詳しくは「古典インク」でググって下さい。
 日本人にとっては書道の墨で馴染み深いのだけど、万年筆の歴史では黒インクってのはつい最近作られた色って感覚なのでしょう。

 このink-x。
 万年筆をメインにすると考えた時に、やっぱりあった方が便利だろうと思って買ったのですが、結局使ってません。
 その理由はまず一つ。
 青インクなんて使わねーし。
 真っ当に色彩雫でインク沼にはまったので、普通の色では面白くないのです。
 当たり前ですが、色彩雫は青系の色でもink-xでは消せません。
 理由二つ目。
 消せるペンはフリクションでいいっしょん。
 修正のためにこんな別のペンを一本持つくらいなら、フリクションを一本持った方がずっと便利です。
 ink-xは修正するチャンスは1回のみですが、フリクションなら何度も修正できるし。

 ちょっと面白かったのが、プレピーのブルーブラックをink-xで消してみた事。
 プラチナのブルーブラックは古典インクなので、青と黒の混合色ではなくベースカラーが完全に青なわけですが、ink-xを使うとそのベースカラーを消せるんです。
 つまり青成分が消えて鉄-没食子酸化合物が残るという不思議体験ができます。
 これはブルーブラックという色を正しく作ってるって証拠ですよ。
 廉価なプレピーに付属するカートリッジのブルーブラックでも、ちゃんと古典インクを使っているのです。
 そのベースカラーを青じゃなくて他の色にしたのが、今年頭に話題になったクラシックインクシリーズってわけです。


サファリ ローラーボール
ゆるふわ清楚


 以前に紹介した改造ローラーボールです。
 まあ詳しくはその記事を読んでください。

 これ軸が万年筆と同じだと思って買ったんですが、実はグリップの三角の部分もちょっと違うんですね。
 ローラーボールや他のペンはどの方向に持っても良いので3方向に面取りしてあるのですが、万年筆はペン先の方向が固定なので面取りしてあるのは2方向だけで、そこに親指と人差し指を置くとニブが正面に向くように設計されているんです。
 つまり持ちやすいように持つと確実に正しく持てるということ。
 ちなみに万年筆カクノも似たようなグリップ形状なんですが、このローラーボールのように3方向に面取りされているので、パッと持ったら2/3の確率でニブの方向が違っててイラっとします。


ティポ
Tipo

 世にも珍しい、ノック式のローラーボール(水性ボールペン)です。
 ティポは以前からあるモデルですが、今年に入ってから軸がリニューアルされました。
 水性ボールペン(ローラーボール)は万年筆っぽい書き味なので、高級ボールペンとして扱われる事が多いのですが、ペン先が乾きやすいので大抵はキャップ式です。
 それを特殊リフィルを使うことによってノック式にしたってのがスイフトというペンで、そのリフィルを流用した廉価版がこのティポです。
 確かに水性は素晴らしい書き味です。
 ただ純正リフィルはボール径が一種類しかなく、そして太いので、細い線が好まれる日本語圏ではあまり評判が良くありません。
 ティポが特異なのは、これラミーのくせに300系互換だって事です。
 つまりサラサやシグノやエナージェルなんかが、ほぼ無改造で入ります。
 ラミーのオシャレ軸で日本製ゲルインクが使えるとなれば、一本持ってても損はしないのではないかと。
 特に300系は海外ではローラーボールのリフィルとして使われる事が多く、その為300系が入る軸は殆どキャップ式なのですが、このティポではノック式であることを売りにしているのでノック式のゲルインクと相性が良いのです。
 ラミーの他にノック式のローラーボールって一つしか知りません。
 一応、他メーカーのリフィルへの交換は自己責任でって言っておきますね。
 純正リフィルは金属ケーシングですが、国産ゲルインクは大抵樹脂リフィルです。
 ケーシングが金属と樹脂では重さが違うので、交換すると重心バランスに影響するのですが、その辺の解決方法はそのうち書きます。


2000
2000

 2000はサファリ/アルスターのようにシリーズ展開されている基幹デザインです。
 ラミーが創業から最初に作ったプロダクトだそうで、思い入れが一番強いんだそうな。
 サファリやティポのような廉価モデルとは違う高級路線なので、私も持ってるのはこの4色ペン一本だけです。
 半世紀以上前の設計なので確かに現代的ではない部分もあるにはあるのだけれど、流石にフラグシップシリーズだけあって妥協は一切ありません。
 まあ、これもググればどんなに凄いかってのはすぐにわかりますわね。
 何が一番凄いかって、半世紀も前の製品なのに今でも通用するデザインで、つか今でもトップクラスの格好良さだって事が驚きですよ。
 他の文具メーカーは今まで何やってたのさ。

 とりあえず、4色ペンしか持ってないのでこれしか語れません。
 もうほんとにとんでもないデザインセンスですよね。
 シンプルを追求して全く無駄がないデザインにも関わらず、ものすごく存在感があるというか。
 これはもう文房具というよりも、現代美術のアート作品といった佇まいです。
 ペンケースに他のペンと一緒に並んでたら浮きまくるけど、美術館に陳列されてたら違和感ないんじゃないかと。
 ま、これは以前にも紹介してるので、そっちも見てって下さい。

 この4色ペンが一番有名である理由は、やっぱりリフィルが4C芯だからでしょう。
 デザインが最高であるのに、リフィルが旧油性な為に書き心地が劣っているってのが唯一の欠点なのだけど、4Cリフィルなので他メーカーから出ている低粘度なインクが使えて欠点がなくなるのが支持されているのです。
 緑が入る4色のボールペンで、ビジネスでもバカにされない高級路線の多機能ペンとなると、選択肢はもうこれしか無いんじゃないかと。
 ラミーは日本メーカー並みに独自規格で展開して融通が利かないのに、デザインが秀逸すぎるからそれでも支持されているという稀有なメーカーです。
 でもたまにティポやコレみたいにスタンダード規格と互換性のある製品が見つかり、話題になる訳です。
 流石にパーカー互換のペンなんて出ないだろうなぁ。



 さて、自分は結構ラミー好きだと思っていたのだけど、改めて見るとあまり種類は持ってませんでしたね。
 ノトとか衝動買いしても良かったかなぁ。
 でも使い途ないしなぁ。
 ラミー製品ってデザインは良いのだけど、案外実用的ではないのかも知れません。
 ペンなんて書ければなんでも良くて、その上でデザインが最高となれば選ばない理由はないのですが、何か目的を持ってペンケースに入れる筆記具をチョイスすると、何故かラミーは選ばれないという。
 事実、私のペンケースにはラミー製品はアルスターが一本しか入っていません。

 ペンではないけど、やっぱりデザインで買ってやっぱり余り使ってない文房具ブランドがあります。
 リヒトラブです。
 デザインが良くてそこそこ手頃な値段の文房具を選ぶと、ラミーとリヒトラブの存在感が大きいですよね。
 高価だったり個人生産だったりすればデザインの良いものはいくらでもあるのだけど、廉価なマスプロダクトで高いデザイン性を維持してるのが他とは違う所です。
 私もついつい買っちゃって気がつけばリヒトラブ製品だらけです。
 んー。
 今度ラミーとリヒトラブだけで文具周りを全部固めてみようかな。
 あまりにも意識高い系でシャレオツ過ぎて、すっごく居心地の悪い環境になりそう。